ISEGORIA / 数学百科事典
統計力学:ミクロ状態と温度
ボルツマン重み・分配関数・ランダムウォークを探ります。
前提知識: 確率とエネルギー
予想してから操作し、計算例と問いで理解を確かめてください。グラフは数式の図示であり、証明ではありません。
1. ボルツマン重み
エネルギー 0 と \(\Delta E\) の二準位系を \(k_B=1\) の単位で考えます。\(T\) を上げると励起の割合 \(p_1\) が ½ に向かって増えますが、½ を超えることはありません。60個の粒子がメトロポリス法で動きます。実行すると、上の準位にある粒子の数がボルツマン分布の割合のまわりで揺らぎます。熱容量は励起の割合が最も速く変わる \(T\approx0.42\,\Delta E\) 付近で最大になります。
計算例. \(k_BT=\Delta E\) のとき \(p_1=1/(e+1)\approx0.269\) です。
注意点. 二準位モデルは相互作用と縮退を無視します。
\(T\)が0に近づくとどうなりますか?
最低エネルギー状態が支配的になります。
2. 分配関数
準位は等間隔の梯子 \(E_i=i\varepsilon\) で、下から \(n\) 個だけが利用可能です。棒はボルツマン確率を示します。右図は、選んだ温度でのすべての \(n\) に対する自由エネルギー \(F=-k_BT\ln Z\) で、無限の梯子の値に近づきます。
計算例. 固定温度で状態を増やすと自由エネルギーは下がります。
注意点. 梯子は可視化のため \(n\) 準位で打ち切っています。実際の振動子には無限個の準位があります。
多重度が重要なのはなぜですか?
利用可能なミクロ状態はそれぞれ Z に正の項を加えるので F は下がります。ただし \(k_BT\) よりずっと高い状態の寄与はほとんどありません。
3. ランダムウォークと拡散
各歩で確率 \((1+b)/2\) で右へ1単位、それ以外は左へ1単位動きます。歩数 \(N\) を増やすと、ウォークは \(Nb\) だけ移動し、\(\sqrt{N}\) に比例して広がります。右図は最終位置の厳密な二項分布で、ウォークと同じ縦軸で描いています。
計算例. 偏りのないウォーク(\(b=0\))では \(\langle x_N^2\rangle=N\ell^2\) なので、二乗平均平方根変位は \(\sqrt{N}\) に比例して増えます。
注意点. 1つの実現値は集団のスケーリング則のまわりで揺らぎます。
\(N\)に比例して増えるものは?
分散 \(N(1-b^2)\ell^2\) で、偏りがなければ平均二乗変位そのものです。典型的な変位は \(\sqrt{N}\) に比例してしか増えません。