ISEGORIA / 数学百科事典
剛体力学:回転・転倒・歳差
テニスラケットの反転、倒れないジャイロ、そしてその両方を支える慣性テンソルを扱います。
前提知識: 古典力学と線形代数
予想してから操作し、計算例と問いで理解を確かめてください。グラフは数式の図示であり、証明ではありません。
1. テニスラケットの定理
三つの慣性モーメントがすべて異なる箱が、トルクを受けずに回転します。長軸か短軸のまわりの回転は安定です。中間の軸のまわりでは、ほんのわずかな乱れが成長し、物体は何度も裏返ります。1985 年に宇宙飛行士ウラジーミル・ジャニベコフが軌道上で蝶ナットに見た現象です。エネルギーと角運動量の保存により、角運動量の点は楕円体と球面が交わる曲線に沿って動くしかありません。
計算例. 回転の速さ \(\omega\) で中間の軸のまわりに線形化すると、\(\lambda=\omega\sqrt{(I_2-I_1)(I_3-I_2)/(I_1I_3)}\) として \(e^{\lambda t}\) のように成長します。この箱では \(I_1:I_2:I_3\approx0.363:0.780:1.083\) なので、\(\lambda\approx0.567\,\omega\) です。
注意点. 反転を起こすトルクはありません。エネルギーと角運動量は常に保存され、読み取り欄に数値誤差によるずれを示しています。内部に摩擦があると実際の物体は最大の軸のまわりの回転に落ち着きますが、ここではそれを扱っていません。
長軸のまわりの小さな乱れが決して大きくならないのはなぜですか?
その軸の近くのポールホードは小さな閉曲線です。エネルギーと \(|\mathbf L|\) の保存により運動はそのうちの一つに閉じ込められるので、角運動量は近くを回ることしかできません。
2. ジャイロ:歳差と章動
重い車輪が軸のまわりに回り、軸の端は支点に載っています。重力は車輪を下へ引きますが、軸は代わりに横へ回ります。トルクが変えるのは角運動量の向きで、大きさではないからです。静止状態から放すと、先端は回りながら上下に揺れ(章動)、カスプを描きます。ちょうどよい横向きの速さで送り出すと、完全に一定の歳差運動をします。
計算例. 速いこまの平均の歳差角速度は \(\Omega\approx mgl/(I_3\omega_3)\) なので、自転を二倍にすると歳差は半分になります。\(I_3=0.8\)、\(mgl=4\)、\(\omega_3=10\) では単位時間あたり 0.5 ラジアンです。
注意点. ここで \(\theta\) は上向きの鉛直から測り、支点に摩擦はなく、\(I_1=1\) としています。実際の支点では摩擦が自転をゆっくり奪うので、車輪が遅くなるにつれて歳差は速くなります。
先端が完全に止まるのはどこですか?
静止状態から放したときの各カスプの頂点です。そこでは \(\dot\theta=0\) であり、\(\theta\) が最初の値に戻ったときにちょうど \(p_\phi-I_3\omega_3\cos\theta\) が 0 になるので \(\dot\phi=0\) でもあります。
3. 慣性テンソルと主軸
平面上の四つの質点をドラッグしてください。基準点を通る軸のまわりの慣性モーメントは、軸の向きに対称行列を通してしか依存しないので、I(θ) は 2θ の正弦波になります。いつも 90° 離れたその最大と最小が主軸で、慣性楕円を見れば一目でわかります。基準点を原点に切り替えると、平行軸の定理がはたらく様子が見られます。
計算例. \((\pm1,0)\) と \((0,\pm2)\) に単位質量を置くと、\(I_{xx}=8\)、\(I_{yy}=2\)、\(I_{xy}=0\) です。座標軸がすでに主軸で、\(I_z=10\) です。
注意点. \(I_z=I_{xx}+I_{yy}\) が成り立つのは平らな物体だけです。立体には \(3\times3\) のテンソル全体が必要ですが、それも対称なので、互いに垂直な三本の主軸をもちます。
主軸がいつも互いに垂直なのはなぜですか?
慣性テンソルは実対称行列であり、実対称行列の異なる固有値に属する固有ベクトルは直交するからです。