Daily Mathematics / 解答
2026年10月22日の解答
この日のカードは難しい定積分とオリジナルのパトナム型の問題の2枚である。まず自分で考え、詰まったら解答を開くこと。
積分
コーシー型の重みをつけた x coth x の対数の積分

次の積分を閉じた形で求めよ。
\[\int_{0}^{\infty}\frac{\ln\!\left(\pi x\coth \pi x\right)}{1+4x^{2}}\,dx\]解答を開く
求める積分を \(I\) とおく。\(t>0\) で \(t\coth t\ge 1\) であるから被積分関数は非負であり,\(0\) の近くでは \(\pi^{2}x^{2}/3\),無限遠では \(\ln(\pi x)/(4x^{2})\) のように振る舞うので,\(I\) は収束する。\(\ln(\pi x\coth\pi x)\) には使える原始関数がなく,\(\coth\pi x=1+2\sum_{k\ge1}e^{-2\pi kx}\) と展開しても級数の対数が残るだけで先へ進めない。要点は \(\pi x\coth\pi x\) を2つの無限積の商とみることである。積の対数は和になるからである。
第1段:2つの無限積展開。 \(\sinh\pi z\) の零点は \(z=ik\),\(\cosh\pi z\) の零点は \(z=i(k-\tfrac12)\)(\(k\in\mathbb{Z}\))であり,オイラー(ワイエルシュトラス)の無限積は
\[\frac{\sinh\pi x}{\pi x}=\prod_{k\ge1}\Bigl(1+\frac{x^{2}}{k^{2}}\Bigr),\qquad \cosh\pi x=\prod_{k\ge1}\Bigl(1+\frac{x^{2}}{(k-\frac12)^{2}}\Bigr)\]となる(\(\sin\pi z=\pi z\prod(1-z^{2}/k^{2})\),\(\cos\pi z=\prod(1-z^{2}/(k-\frac12)^{2})\) に \(z=ix\) を代入すればよい)。よって \(\pi x\coth\pi x=\cosh\pi x\big/\bigl(\sinh(\pi x)/(\pi x)\bigr)\) であり,
\[\ln(\pi x\coth\pi x)=\sum_{k\ge1}u_{k}(x),\qquad u_{k}(x)=\ln\Bigl(1+\frac{x^{2}}{(k-\frac12)^{2}}\Bigr)-\ln\Bigl(1+\frac{x^{2}}{k^{2}}\Bigr)\]を得る。\(k-\tfrac12<k\) であるから各 \(u_{k}\) は非負である。したがってトネリの定理により,正の重み \(1/(1+4x^{2})\) に対して項別積分してよい。
第2段:1項の積分。 \(c>0\) に対して \(J(c)=\displaystyle\int_{0}^{\infty}\frac{\ln(1+x^{2}/c^{2})}{1+4x^{2}}\,dx\) とおく。各 \(c_{0}>0\) について \([c_{0},\infty)\) 上で優収束定理が使えるので積分記号下で微分でき,\(\frac{\partial}{\partial c}\ln(1+x^{2}/c^{2})=-\frac{2x^{2}}{c(c^{2}+x^{2})}\) より
\[J'(c)=-\frac{2}{c}\int_{0}^{\infty}\frac{x^{2}\,dx}{(x^{2}+c^{2})(1+4x^{2})}=-\frac{1}{2c}\int_{0}^{\infty}\frac{x^{2}\,dx}{(x^{2}+c^{2})(x^{2}+\frac14)}=-\frac{1}{2c}\cdot\frac{\pi}{2(c+\frac12)}\]となる。ここで部分分数分解から従う \(\int_{0}^{\infty}\frac{x^{2}\,dx}{(x^{2}+a^{2})(x^{2}+b^{2})}=\frac{\pi}{2(a+b)}\) を用いた。よって \(J'(c)=-\frac{\pi}{2}\bigl(\frac1c-\frac{1}{c+\frac12}\bigr)\) であり,\(c\to\infty\) で \(J(c)\to0\) であるから
\[J(c)=\frac{\pi}{2}\ln\Bigl(1+\frac{1}{2c}\Bigr)\]を得る。
第3段:ウォリスの積が現れる。 第2段を \(c=k-\tfrac12\) と \(c=k\) に適用すると
\[\int_{0}^{\infty}\frac{u_{k}(x)}{1+4x^{2}}\,dx=\frac{\pi}{2}\Bigl[\ln\frac{2k}{2k-1}-\ln\frac{2k+1}{2k}\Bigr]=\frac{\pi}{2}\ln\frac{4k^{2}}{4k^{2}-1}\]となる。\(k\) について和をとり,ウォリスの積 \(\prod_{k\ge1}\frac{4k^{2}}{4k^{2}-1}=\frac{\pi}{2}\) を用いれば
\[I=\frac{\pi}{2}\ln\prod_{k\ge1}\frac{4k^{2}}{4k^{2}-1}=\frac{\pi}{2}\ln\frac{\pi}{2}\]である。重みを \(1/(x^{2}+b^{2})\) にしても同じ計算で \(\frac{\pi}{b}\ln\frac{\Gamma(\frac12)\Gamma(1+b)}{\Gamma(\frac12+b)}\) が得られ,\(b=\tfrac12\) はガンマ関数の商がちょうどウォリスの \(\pi/2\) に退化する場合である。
数値検証。 \(x=t/(1-t)\) と置換し,\(t=1\) に向かって幾何的に細かくしたパネルごとに100点のガウス・ルジャンドル求積を行い,\(x=10^{14}\) より先の裾を明示的に加えると \(0.709344454712778\) を得た。これは \(\frac{\pi}{2}\ln\frac{\pi}{2}=0.709344454712778\ldots\) と \(10^{-15}\) 以内で一致する。
競技数学の問題
平方根で上限を決めた石取りゲーム

2人が1つの山から交互に石を取る。\(m\) 個の山からは \(1\le k\le\sqrt{m}\) を満たす整数 \(k\) 個を取り,動けない者の負けとする。後手必勝となる山の大きさを \(0=n_{0}<n_{1}<\cdots\) とし,各整数 \(d\ge 2\) に対して \(n_{j+1}-n_{j}=d\) となる \(j\) の個数を求めよ。
解答を開く
手番の者が最善を尽くしても負ける山の大きさを P 局面(これが \(n_{j}\) である),それ以外を N 局面とよぶ。最初のいくつかを手で求めると \(0,2,5,8,12,17,22,28,34,41,48,56,65,\dots\) となり,間隔は \(2,3,3,4,5,5,6,6,7,7,8,9,9,\dots\) である。「\(3\) 以上の間隔はどれもちょうど2回現れる」という自然な予想は誤りであり,間隔 \(4\),\(8\),\(16\) は1回しか現れない。証明は2のべきがどこから来るかを説明しなければならず,ゲーム木を直接調べてもそれは見えない。有効なのは,ゲームを漸化式に直し,1つの整数のずれを追跡することである。
第1段:ゲームを漸化式に直す。 \(m\) 個の山から到達できる大きさは区間 \([m-\lfloor\sqrt m\rfloor,\,m-1]\) の整数全体であり,これは \(m\) の直前で終わる連続した整数の塊である。ある大きさが P 局面であるのは,どの手でも P 局面に到達できないときに限る。\(n_{j}\) が P 局面で,\(n_{j}\) と \(m\) の間に P 局面がないとする。このとき \((n_{j},m)\) の大きさはすべて N 局面であり,到達可能な集合は \(m-1\) で終わる区間であるから,\(n_{j}\) より小さい P 局面に到達できるのは \(n_{j}\) に到達できるときに限る。よって \(m\) が P 局面であるための必要十分条件は \(n_{j}\) に届かないこと,すなわち \(m-n_{j}>\lfloor\sqrt m\rfloor\) である。したがって
\[n_{j+1}=n_{j}+g(n_{j}),\qquad g(n)=\min\{d\ge1:\ d>\lfloor\sqrt{n+d}\rfloor\}\]を得る。
第2段:間隔の公式。 整数 \(d\) について \(d>\lfloor x\rfloor\) は \(d>x\) と同値であるから,\(d>\lfloor\sqrt{n+d}\rfloor\iff d^{2}>n+d\iff d(d-1)>n\) である。\(d\ge1\) で \(d(d-1)\) は増加するので,\(g(n)=d\) となるのは \(n\) が
\[I_{d}=\bigl[(d-1)(d-2),\ d(d-1)\bigr),\qquad d\ge2\]に属するときに限る。これらの区間は非負整数を分割し,\(I_{d}\) の長さは \(2(d-1)\) である。よって \(n_{j+1}-n_{j}=d\) となる \(j\) の個数は,\(I_{d}\) に含まれる P 局面の個数 \(c_{d}\) に等しい。
第3段:各区間の P 局面は1個か2個。 \(I_{d}\) の中では隣り合う P 局面の差はちょうど \(d\) であり,\(2(d-1)<2d\) であるから \(c_{d}\le2\) である。また \(c_{d}\ge1\) である。実際,\(a\) を \(I_{d-1}\) の最後の P 局面とすると,\(a+(d-1)\) は \(I_{d-1}\) の外にあり,\(a+(d-1)\le(d-1)(d-2)-1+(d-1)<d(d-1)\) を満たすので \(I_{d}\) に属する(また \(n_{0}=0\in I_{2}\) である)。\(I_{d}\) の最初の P 局面を \(a_{d}\) とし,\(r_{d}=a_{d}-(d-1)(d-2)\) とおく。\(0\le r_{d}\le d-2\) を帰納法で示す。このとき \(a_{d}+d\in I_{d}\) となるのは \(r_{d}+d<2(d-1)\) のときに限るから
\[r_{d}\le d-3\ \text{ ならば } c_{d}=2,\qquad r_{d}=d-2\ \text{ ならば } c_{d}=1\]である。次の P 局面 \(a_{d}+c_{d}d\) は \(I_{d+1}\) の最初の P 局面であるから,\(r_{d+1}=r_{d}+c_{d}d-2(d-1)\) となる。
第4段:余裕と2のべき。 \(s_{d}=d-2-r_{d}\ge0\) とおく。漸化式は次のようになる。\(s_{d}>0\) ならば \(c_{d}=2\) かつ \(s_{d+1}=s_{d}-1\),\(s_{d}=0\) ならば \(c_{d}=1\) かつ \(s_{d+1}=d-1\) である。いずれの場合も \(0\le s_{d+1}\le(d+1)-2\) であり,帰納法が閉じる。出発点は \(a_{2}=0\) であるから \(r_{2}=0\),\(s_{2}=0\) である。\(s_{2^{k}}=0\) ならば \(s_{2^{k}+1}=2^{k}-1\) であり,以後 \(s\) は1ずつ減って正のまま進み,ちょうど \(d=2^{k}+1+(2^{k}-1)=2^{k+1}\) で \(0\) になる。\(k\) についての帰納法により,\(s_{d}=0\) となるのは \(d\) が2のべきのときに限る。
結論。 間隔 \(d\) は,\(d\) が2のべきならちょうど1回,そうでなければちょうど2回現れる。ずれをたどり直すと P 局面も明示できる。\(2^{e}\) を \(d\) 以上の最小の2のべきとすると,P 局面はすべての \(d\ge2\) に対する \(d^{2}-d-2^{e}\) と,2のべきでないすべての \(d\ge3\) に対する \(d^{2}-2^{e}\) である。
計算による検証。 ゲームから直接 \(10^{6}\) 個までの P 局面を計算し,上の明示式と完全に一致することを確かめた。また石が \(2\cdot10^{5}\) 個以下で現れるすべての間隔について個数を数え,2のべきはそれぞれ1回,それ以外の \(d\ge2\) はそれぞれ2回であることを確かめた。