Daily Mathematics / 解答
2026年10月21日の解答
この日のカードは難しい定積分とオリジナルのパトナム型の問題の2枚である。まず自分で考え、詰まったら解答を開くこと。
積分
双曲線正割関数とフレネル型の位相の積分

次の積分を閉じた形で求めよ。
\[\int_{0}^{\infty}\frac{\sin(\pi x^{2})}{\cosh(\pi x)}\,dx\]解答を開く
求める積分を \(I\) とおく。素直に \(\operatorname{sech}(\pi x)=2\sum_{k\ge0}(-1)^{k}e^{-(2k+1)\pi x}\) と展開すると,各項は不完全フレネル積分 \(\int_{0}^{\infty}\sin(\pi x^{2})e^{-(2k+1)\pi x}\,dx\) となり,どれも閉じた形をもたないので項別計算は行き詰まる。自己双対な組 \(\operatorname{sech}(\pi x)\) と \(e^{\pi i x^{2}}\) にパーセヴァルの等式を用いても,全実軸上の積分の偏角が \(\pi/8\) であることしかわからず,大きさは決まらない。有効なのは \(\cosh\) の半周期だけ積分路をずらす方法である。
第1段:複素化。 \(J=\int_{-\infty}^{\infty}\frac{e^{\pi i x^{2}}}{\cosh(\pi x)}\,dx\) とおく。これは絶対収束する。\(I\) の被積分関数は偶関数であるから \(I=\tfrac12\operatorname{Im}J\) である。
第2段:積分路。 \(\varphi(w)=e^{\pi i w^{2}}/\cosh(\pi w)\) とおく。\(\cosh(\pi w)\) の零点は \(w=i(k+\tfrac12)\) であるから,閉じた帯 \(0\le\operatorname{Im}w\le\tfrac12\) 内の極は上辺上の \(w=i/2\) ただ1つである。頂点 \(\pm T,\ \pm T+\tfrac{i}{2}\) の長方形に沿って \(\varphi\) を積分し,上辺は \(i/2\) の下側を小さな半円で迂回させる。内部で正則であるから周回積分は \(0\) である。半径を \(0\) に近づけると,時計回りの半円は \(-\pi i\operatorname{Res}_{w=i/2}\varphi\) を与えるので
\[\int_{-T}^{T}\varphi(x)\,dx=\mathrm{PV}\!\int_{-T}^{T}\varphi\!\left(x+\tfrac{i}{2}\right)dx+\pi i\operatorname{Res}_{w=i/2}\varphi-(\text{縦の辺})\]を得る。
第3段:縦の辺は消える。 \(w=\pm T+iy\ (0\le y\le\tfrac12)\) 上では \(\lvert e^{\pi i w^{2}}\rvert=e^{\mp2\pi Ty}\),\(\lvert\cosh(\pi w)\rvert\ge\sinh(\pi T)\) である。右の辺の寄与は \(\tfrac12/\sinh(\pi T)\) 以下,左の辺の寄与は \(\int_{0}^{1/2}e^{2\pi Ty}\,dy/\sinh(\pi T)\le e^{\pi T}/(2\pi T\sinh(\pi T))\) 以下であり,ともに \(0\) に収束する。
第4段:留数。 \(\frac{d}{dw}\cosh(\pi w)=\pi\sinh(\pi w)\) は \(w=i/2\) で \(\pi i\) に等しく,\(e^{\pi i(i/2)^{2}}=e^{-\pi i/4}\) であるから \(\operatorname{Res}_{w=i/2}\varphi=e^{-\pi i/4}/(\pi i)\),すなわち \(\pi i\operatorname{Res}=e^{-\pi i/4}\) である。
第5段:上辺。 \(\cosh\bigl(\pi x+\tfrac{\pi i}{2}\bigr)=i\sinh(\pi x)\),\(e^{\pi i(x+i/2)^{2}}=e^{\pi i x^{2}}e^{-\pi x}e^{-\pi i/4}\) より
\[\varphi\!\left(x+\tfrac{i}{2}\right)=\frac{e^{-\pi i/4}}{i}\,e^{\pi i x^{2}}\,\frac{e^{-\pi x}}{\sinh(\pi x)}=\frac{e^{-\pi i/4}}{i}\,e^{\pi i x^{2}}\bigl(\coth(\pi x)-1\bigr)\]である。\(e^{\pi i x^{2}}\coth(\pi x)\) は奇関数であるから,\([-T,T]\) 上の主値はすべての \(T\) で \(0\) である。残りの部分は \(-\frac{e^{-\pi i/4}}{i}\int_{-T}^{T}e^{\pi i x^{2}}\,dx\) であり,フレネル積分 \(\int_{-\infty}^{\infty}e^{\pi i x^{2}}\,dx=e^{\pi i/4}\) により \(-\frac{e^{-\pi i/4}e^{\pi i/4}}{i}=i\) に収束する。
第6段:まとめ。 \(T\to\infty\) として
\[J=i+e^{-\pi i/4}=\frac{1}{\sqrt2}+i\left(1-\frac{1}{\sqrt2}\right)\]を得る。検算として \(\tan(\arg J)=\sqrt2-1=\tan(\pi/8)\) であり,パーセヴァルから予想される偏角と一致する。虚部をとれば \(\int_{-\infty}^{\infty}\frac{\sin(\pi x^{2})}{\cosh(\pi x)}\,dx=1-\frac{1}{\sqrt2}\),よって \(I=\frac{2-\sqrt2}{4}\) である。実部からは \(\int_{0}^{\infty}\frac{\cos(\pi x^{2})}{\cosh(\pi x)}\,dx=\frac{1}{2\sqrt2}\) も得られる。これらはラマヌジャンによる値であり,モーデル積分の特別な場合である。
数値検証。 \([0,16]\) 上で100点ガウス・ルジャンドル則を200区間および800区間で合成した値は \((2-\sqrt2)/4\approx0.1464466094\) と \(3\times10^{-16}\) 以内で一致し,余弦版も \(1/(2\sqrt2)\) と同じ精度で一致した。
競技数学の問題
係数を入れ替えた2つの2次式と素数を法とする根

\(p\) を \(p\equiv 5\pmod 6\) を満たす素数とする。\(a,b\in\{0,1,\dots,p-1\}\) の順序対 \((a,b)\) のうち,
\[x^{2}+ax+b\quad\text{と}\quad x^{2}+bx+a\]がともに \(p\) を法として根をもつものの個数を,\(p\) を用いて表せ。
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\(\mathbb{F}_{p}\) で考える。\(\chi\) を \(\chi(0)=0\) としたルジャンドル記号とし,\(D=0\) のとき \(\delta(D)=1\),それ以外で \(\delta(D)=0\) とおく。\(D_{1}=a^{2}-4b\),\(D_{2}=b^{2}-4a\) とし,求める個数を \(N\) とおく。すべてをルジャンドル記号で展開するのが自然な第一手であるが,それでは和 \(\sum_{a,b}\chi\bigl((a^{2}-4b)(b^{2}-4a)\bigr)\) が残る。これは4次曲面に沿った指標和であり,一般には閉じた形をもたない。実際 \(p\equiv1\pmod 6\) では個数は不規則である(\(p=7\) で \(22\),\(p=13\) で \(55\))。要点は,この和を根の個数として数え直すことである。
第1段:指示関数。 \(p\) は奇数であるから,\(x^{2}+ax+b\) が根をもつのは \(D_{1}\) が平方数または \(0\) のときに限り,そのとき根はちょうど \(1+\chi(D_{1})\) 個ある。この事象の指示関数は \(\tfrac12\bigl(1+\chi(D_{1})+\delta(D_{1})\bigr)\) であるから
\[4N=\sum_{a,b}\bigl(1+\chi(D_{1})+\delta(D_{1})\bigr)\bigl(1+\chi(D_{2})+\delta(D_{2})\bigr)\]である。
第2段:鍵となる事実。 \(p\equiv2\pmod 3\) より \(\gcd(3,p-1)=1\) であり,\(x\mapsto x^{3}\) は \(\mathbb{F}_{p}\) の全単射である。とくに1の3乗根は \(1\) のみであり,\(64\) の3乗根は \(4\) ただ1つである。
第3段:易しい項。 \(\sum1=p^{2}\) である。\(a\) を固定して \(b\) を動かすと \(D_{1}\) は \(\mathbb{F}_{p}\) 全体を動くので,\(\sum\chi(D_{1})=0\),\(\sum\delta(D_{1})=p\) である。\(D_{2}\) についても同様である。\(D_{1}=D_{2}=0\) となる組は \(4b=a^{2}\) かつ \(a^{4}=64a\) を満たすので \(a=0\) または \(a^{3}=64\) であり,\((0,0)\) と \((4,4)\) のみである。よって \(\sum\delta(D_{1})\delta(D_{2})=2\) である。
第4段:混合項。 \(\delta(D_{2})=1\) ならば \(a=b^{2}/4\) である。\(b=4c\) とおくと \(a=4c^{2}\),\(D_{1}=16(c^{4}-c)\) となるから \(\sum\chi(D_{1})\delta(D_{2})=\sum_{c}\chi(c^{4}-c)\) である。\(c=0\) の項は \(0\) であり,\(c\ne0\) では \(\chi(c^{4}-c)=\chi(c^{4})\chi(1-c^{-3})=\chi(1-c^{-3})\) である。第2段より \(u=c^{-3}\) は \(\mathbb{F}_{p}^{\times}\) 全体を動くので,和は \(\sum_{u\ne0}\chi(1-u)=\sum_{v}\chi(v)-\chi(1)=-1\) である。対称性より \(\sum\delta(D_{1})\chi(D_{2})=-1\) も成り立つ。
第5段:難しい項を2通りに数える。 \(r^{2}+ar+b=0\) かつ \(s^{2}+bs+a=0\) を満たす4つ組 \((a,b,r,s)\) の個数を \(M\) とおく。各 \((a,b)\) について根を数えれば
\[M=\sum_{a,b}\bigl(1+\chi(D_{1})\bigr)\bigl(1+\chi(D_{2})\bigr)=p^{2}+S,\qquad S=\sum_{a,b}\chi(D_{1})\chi(D_{2})\]である。一方 \((r,s)\) ごとに数える。第1式から \(b=-r^{2}-ar\) であり,第2式は \(s^{2}-r^{2}s+a(1-rs)=0\) となって \(a\) について1次である。\(rs\ne1\) ならば \(a\) はただ1つに定まり(\(b\) も定まる),そのような組は \(p^{2}-(p-1)\) 個ある。\(rs=1\) ならば \(s(s-r^{2})=0\) が必要であり,\(s\ne0\) より \(s=r^{2}\),したがって \(r^{3}=1\) である。第2段より \(r=s=1\) であり,このときすべての \(a\) が条件を満たすので解は \(p\) 個ある。\(rs=1\) となる残りの \(p-2\) 組には解がない。よって \(M=p^{2}-p+1+p=p^{2}+1\),すなわち \(S=1\) である。
第6段:合計。 すべてを加えて
\[4N=p^{2}+(0+0)+(p+p)+S+(-1)+(-1)+2=p^{2}+2p+1\]を得るから \(N=\left(\frac{p+1}{2}\right)^{2}\) である。たとえば \(p=5\) では \(9\),\(p=2027\) では \(1014^{2}\) である。
数値検証。 \(400\) 未満の \(p\equiv5\pmod 6\) を満たすすべての素数(\(5\) から \(389\) までの39個)について,\(p^{2}\) 個の組をすべて調べた個数が \(\bigl(\tfrac{p+1}{2}\bigr)^{2}\) と一致すること,また \(p\equiv1\pmod 6\) ではこの公式が成り立たないことを確認した。