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ISEGORIABenjamin Haire
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Daily Mathematics / 解答

2026年10月18日の解答

この日のカードは難しい定積分とオリジナルのパトナム型の問題の2枚である。まず自分で考え、詰まったら解答を開くこと。

積分

円分多項式を重みとする対数の正弦の積分

カード: 円分多項式を重みとする対数の正弦の積分

次の積分を閉じた形で求めよ。

\[\int_{0}^{\infty}\frac{\sin(\ln x)}{\ln x}\,\frac{dx}{x^{2}+x+1}\]
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求める積分を \(I\) とおく。被積分関数は \((0,\infty)\) 上で連続(\(x=1\) での値は \(1\))であり,\(1/(x^{2}+x+1)\) で抑えられるから \(I\) は絶対収束する。初等的な原始関数はなく,対称性 \(x\mapsto 1/x\)(両因子と \(dx/(x^{2}+x+1)\) を不変に保つ)も積分範囲を \((0,1)\) に折り返すだけで,分母の \(\ln x\) は消えない。そこでパラメータを導入してこの分母を取り除く。

第1段:パラメータ積分。 すべての \(x>0\) に対して \(\dfrac{\sin(\ln x)}{\ln x}=\displaystyle\int_{0}^{1}\cos(t\ln x)\,dt\) である(\(x=1\) では両辺とも \(1\))。二重積分の被積分関数は \((0,\infty)\times[0,1]\) 上で可積分な \(1/(x^{2}+x+1)\) で抑えられるから,フビニの定理により

\[I=\int_{0}^{1}C(t)\,dt,\qquad C(t)=\int_{0}^{\infty}\frac{\cos(t\ln x)}{x^{2}+x+1}\,dx\]

を得る。

第2段:複素指数でのメリン変換。 \(M(s)=\displaystyle\int_{0}^{\infty}\frac{x^{s-1}}{x^{2}+x+1}\,dx\) とおく。これは \(0<\operatorname{Re}s<2\) で収束し,正則である。\(x^{it}=\cos(t\ln x)+i\sin(t\ln x)\) であり,\(\int_{0}^{\infty}\sin(t\ln x)\,dx/(x^{2}+x+1)=0\)(置換 \(x\mapsto 1/x\) で符号が反転する)であるから,\(C(t)=M(1+it)\) である。

第3段:\(M\) の計算。 \(\alpha=e^{i\pi/3}\) とおくと \(x^{2}+x+1=(x+\alpha)(x+\bar\alpha)\),\(\bar\alpha-\alpha=-i\sqrt3\) である。実数 \(0<s<1\) と \(|\arg c|<\pi\) に対して \(\int_{0}^{\infty}\frac{x^{s-1}}{x+c}\,dx=\frac{\pi\,c^{s-1}}{\sin\pi s}\)(主値の冪)が成り立つ。実際,\(c>0\) のときは \(x=cy\) とおけばベータ積分 \(B(s,1-s)\) であり,両辺とも切れ目を入れた平面上で \(c\) について正則である。部分分数分解により

\[M(s)=\frac{1}{\bar\alpha-\alpha}\cdot\frac{\pi\,(\alpha^{s-1}-\bar\alpha^{s-1})}{\sin\pi s}=\frac{\pi\,\sin\!\bigl(\pi(1-s)/3\bigr)}{\sin(\pi/3)\,\sin\pi s}\]

を得る。右辺は \(0<\operatorname{Re}s<2\) で正則である(\(s=1\) における \(\sin\pi s\) の零点は分子の零点で打ち消される)から,一致の定理によりこの式は帯領域全体で成り立つ。\(s=1+it\) では \(\sin(-i\pi t/3)=-i\sinh(\pi t/3)\),\(\sin(\pi+i\pi t)=-i\sinh\pi t\) であるから

\[C(t)=\frac{2\pi}{\sqrt3}\,\frac{\sinh(\pi t/3)}{\sinh\pi t}\qquad(t\ne0)\]

であり,\(t=0\) での極限値は当然 \(2\pi/(3\sqrt3)=\int_{0}^{\infty}dx/(x^{2}+x+1)\) である。

第4段:\(t\) についての積分。 \(a=\pi t/3\) とおき,\(\sinh 3a=\sinh a\,(4\cosh^{2}a-1)=\sinh a\,(1+2\cosh 2a)\) を用いると

\[I=\frac{2\pi}{\sqrt3}\cdot\frac{3}{\pi}\int_{0}^{\pi/3}\frac{da}{1+2\cosh 2a}=2\sqrt3\int_{0}^{\pi/3}\frac{da}{1+2\cosh 2a}.\]

さらに \(u=\tanh a\) とおくと \(\cosh 2a=\frac{1+u^{2}}{1-u^{2}}\),\(da=\frac{du}{1-u^{2}}\) であるから,被積分式は \(\frac{du}{(1-u^{2})+2(1+u^{2})}=\frac{du}{3+u^{2}}\) となる。したがって

\[I=2\sqrt3\cdot\frac{1}{\sqrt3}\arctan\frac{\tanh(\pi/3)}{\sqrt3}=2\arctan\!\left(\frac{\tanh(\pi/3)}{\sqrt3}\right)\approx 0.8469477380\]

を得る。

検算。 同値な形 \(I=2\int_{0}^{\infty}\frac{\sin u}{u\,(1+2\cosh u)}\,du\)(\(x=e^{u}\) とおく)を区間 \([0,60]\) 上で 100 点ガウス・ルジャンドル複合求積(40 区間および 200 区間)により計算し,さらに元の積分を \((0,1)\) と \((1,\infty)\) に分けて直接計算した。三つの値はいずれも閉じた形と約 \(10^{-16}\) の精度で一致した。

答え. \(2\arctan\!\left(\dfrac{\tanh(\pi/3)}{\sqrt3}\right)\approx 0.8469477380\)

競技数学の問題

二回合成しても後退しない関数の個数

カード: 二回合成しても後退しない関数の個数

\(n\) を正の整数とする。\(\{1,\dots,n\}\) から自身への関数 \(f\) であって,次を満たすものを考える。

\[f(f(k))\ge k\qquad(1\le k\le n)\]

このような \(f\) の個数は,同着を許すときの \(n\) 人の走者の着順の決まり方の総数に等しいことを証明せよ。

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有限の全順序集合 \(X\) に対し,\(g:X\to X\) がすべての \(x\in X\) で \(g(g(x))\ge x\) を満たすとき 良い写像 とよぶ。良い写像の個数は \(|X|\) のみによるから,\(|X|=m\) のときの個数を \(a_{m}\) とおく(\(a_{0}=1\))。また同着を許す \(m\) 人の着順の総数(順序付き集合分割の数)を \(b_{m}\) とおく(\(b_{0}=1\))。両者が同じ漸化式を満たすことを示して \(a_{n}=b_{n}\) を証明する。

素朴な方針が行き詰まる理由。 最大の元 \(n\) を取り除くと \(f(f(n))=n\) が従うが,残りの元への制約が \(f(n)\) の値に依存してしまう。像の大きさで分類しても,相異なる順位の数ごとの着順の数とは一致しない(\(n=3\) で像の大きさが 3 の良い写像は 4 個であり,\(3!=6\) 個ではない)。硬い振る舞いをするのは最小の元である。

第1段:\(b\) の漸化式。 1 着の走者の集合(大きさ \(j\ge1\))を選び,残り \(n-j\) 人の着順を決めればよい。よって \(b_{n}=\sum_{j=1}^{n}\binom{n}{j}b_{n-j}=\sum_{r=0}^{n-1}\binom{n}{r}b_{r}\) である。

第2段:元 1 に関する二つの事実。 \(f\) を \([n]=\{1,\dots,n\}\) 上の良い写像とし,\(C=f^{-1}(1)\),\(b=f(1)\) とおく。

(i) \(k\ge2\) ならば \(f(k)\notin C\) である。実際,そうでなければ \(f(f(k))=1<k\) となる。

(ii) \(c\in C\) における条件は \(f(f(c))=f(1)=b\ge c\) であるから,\(C\ne\varnothing\) ならば \(b\ge\max C\) である。1 自身における条件 \(f(f(1))\ge1\) は自明に成り立つ。

第3段:場合分け。 \(R\subseteq\{2,\dots,n\}\) に対し \(C_{R}=\{2,\dots,n\}\setminus R\) とおく。

場合 1:\(f(1)=1\)。 このとき \(1\in C\) であり,(ii) より \(\max C\le1\),すなわち \(C=\{1\}\) である。(i) と合わせて \(f\) は \(\{2,\dots,n\}\) を自身に写し,そこで良い写像である。逆に \(\{2,\dots,n\}\) 上の良い写像を \(f(1)=1\) で延長したものは良い写像である。個数は \(a_{n-1}\) である。

場合 2:\(C=\varnothing\)。 1 に写る元はないから,\(f\) は \(\{2,\dots,n\}\) を自身に写し,そこで良い写像である。一方 \(f(1)=b\in\{2,\dots,n\}\) は任意である(1 における条件は自明であり,\(f(k)=1\) となる \(k\ge2\) がないので他の条件に \(f(1)\) は現れない)。個数は \((n-1)a_{n-1}\) である。

場合 3:\(C\ne\varnothing\) かつ \(1\notin C\)。 このとき \(C\subseteq\{2,\dots,n\}\) であり,\(R=\{2,\dots,n\}\setminus C\) は真部分集合で \(C=C_{R}\) である。\(k\in R\) に対して \(f(k)\ne1\) かつ (i) より \(f(k)\notin C\) であるから,\(f(R)\subseteq R\) であり \(g=f|_{R}\) は良い写像である。また \(C_{R}\) 上で \(f\equiv1\) であり,(ii) より \(b\ge\max C_{R}\ge2\) である。

  (3a) \(b\in C_{R}\) のとき。\(b=\max C_{R}\) である。逆に,任意の真部分集合 \(R\) と \(R\) 上の良い写像 \(g\) に対し,\(R\) 上で \(f=g\),\(C_{R}\) 上で \(f=1\),\(f(1)=\max C_{R}\) と定めた \(f\) は良い写像である。実際,\(R\) 上では仮定より,1 では \(f(f(1))=1\ge1\),\(k\in C_{R}\) では \(f(f(k))=f(1)=\max C_{R}\ge k\) である。寄与は \(\sum_{R\subsetneq\{2,\dots,n\}}a_{|R|}\) である。

  (3b) \(b\in R\) のとき。\(b>\max C_{R}\) であり,これは \(\{b,b+1,\dots,n\}\subseteq R\) と同値である。逆に,任意の真部分集合 \(R\),\(R\) 上の良い写像 \(g\),およびそのような \(b\) から良い写像 \(f\) が得られる。実際,1 では \(f(f(1))=g(b)\ge1\),\(k\in C_{R}\) では \(f(f(k))=b>\max C_{R}\ge k\) である。寄与は \(\sum_{R}t(R)\,a_{|R|}\) である。ここで \(t(R)=\#\{b\in\{2,\dots,n\}:\{b,\dots,n\}\subseteq R\}\) とおいた。

これらの場合は互いに排反で全体を尽くし,\(f\) から \((R,g,b)\) が一意に定まる。\(R=\{2,\dots,n\}\) のときは \(t(R)=n-1\) であるから,場合 1 と場合 2 の寄与の和はこの \(R\) に対する \((1+t(R))a_{|R|}\) に等しい。以上より

\[a_{n}=\sum_{R\subseteq\{2,\dots,n\}}\bigl(1+t(R)\bigr)\,a_{|R|}.\]

第4段:大きさごとにまとめる。 \(|R|=r\)(\(0\le r\le n-1\))を固定する。そのような \(R\) は \(\binom{n-1}{r}\) 個ある。それらにわたる \(t(R)\) の和は \(\{b,\dots,n\}\subseteq R\) を満たす組 \((R,b)\) の個数である。\(j=n-b+1\in\{1,\dots,r\}\) とおくと,\(R\) の残り \(r-j\) 個の元は \(\{2,\dots,b-1\}\) の \(n-1-j\) 個の元から選ばれるから

\[\sum_{|R|=r}t(R)=\sum_{j=1}^{r}\binom{n-1-j}{r-j}=\sum_{i=0}^{r-1}\binom{n-1-r+i}{i}=\binom{n-1}{r-1}\]

である(ホッケースティック恒等式 \(\sum_{i=0}^{m}\binom{s+i}{i}=\binom{s+m+1}{m}\) による。\(r=0\) のときは空和で \(0\) である)。よって大きさ \(r\) の重みの合計は \(\binom{n-1}{r}+\binom{n-1}{r-1}=\binom{n}{r}\) であり

\[a_{n}=\sum_{r=0}^{n-1}\binom{n}{r}a_{r}\]

を得る。

結論。 \(a_{0}=b_{0}=1\) であり,\(a\) と \(b\) は同じ漸化式を満たすから,強い帰納法によりすべての \(n\) で \(a_{n}=b_{n}\) である。すなわち良い関数の個数は同着を許す着順の総数(順序付きベル数 \(1,3,13,75,541,\dots\))に等しい。

検算。 \(n\le7\) について \(n^{n}\) 個の関数すべてを計算機で数え上げた。得られた個数 \(1,3,13,75,541,4683,47293\) は第1段の漸化式から計算した順序付きベル数と一致した。

答え. \(a_n=\sum_{r=0}^{n-1}\binom{n}{r}a_r\),\(a_0=1\):順序付きベル数(フビニ数)\(1,3,13,75,541,4683,\dots\) であり,同着を許す着順の総数に等しい。

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