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ISEGORIABenjamin Haire
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Daily Mathematics / 解答

2026年10月9日の解答

この日のカードは難しい定積分とオリジナルのパトナム型の問題の2枚である。まず自分で考え、詰まったら解答を開くこと。

積分

ベータ核に対する対数の二乗の積分

カード: ベータ核に対する対数の二乗の積分

次の定積分を閉じた形で求めよ。

\[\int_{0}^{1}\frac{\ln x\,\ln^{2}(1-x)}{x}\,dx\]
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積分の値が \(-\dfrac{\pi^{4}}{180}=-\dfrac{\zeta(4)}{2}\) であることを示す。積分を \(I\) とおく。被積分関数は \(0\) の近くで \(x\ln x\),\(1\) の近くで \(\ln^{2}(1-x)\) のようにふるまうので,\(I\) は収束する。

直接の計算が行き詰まる理由。\(\ln^{2}(1-x)=2\sum_{n\ge2}\frac{H_{n-1}}{n}x^{n}\) と展開し \(\int_0^1x^{n-1}\ln x\,dx=-1/n^{2}\) を用いると \(I=-2\sum_{n\ge2}H_{n-1}/n^{3}\) というオイラー和を得る。この和の計算こそが難所であり,級数展開は問題を言い換えたにすぎない。そこで計算をベータ関数に任せる。

第1段:極を取り除いたベータ関数。\(a>-1\),\(b>-1\) に対して

\[G(a,b)=\int_{0}^{1}x^{a-1}\bigl((1-x)^{b}-1\bigr)\,dx\]

とおく。\(0\) の近くで \((1-x)^{b}-1=O(x)\) であり,\(1\) の近くで \((1-x)^{b}\) は可積分であるから,これは収束する。\(a>0\) ならば積分を分けてよく,\(G(a,b)=B(a,b+1)-\frac1a\) である。原点の近傍で導関数は可積分関数で抑えられるので積分記号下で微分でき,\(\partial_a\) は \(\ln x\) を,\(\partial_b^{2}\) は \(\ln^{2}(1-x)\) を生み,\(-1\) は消える。したがって

\[I=\partial_a\partial_b^{2}G(0,0)\]

であり,\(I\) は \(G\) の原点でのテイラー展開における \(ab^{2}\) の係数の \(1!\,2!=2\) 倍である。

第2段:ガンマ関数で書く。\(\Gamma(a)=\Gamma(1+a)/a\) より

\[G(a,b)=\frac{1}{a}\left(\frac{\Gamma(1+a)\Gamma(1+b)}{\Gamma(1+a+b)}-1\right)=\frac{e^{L(a,b)}-1}{a},\qquad L=\ln\Gamma(1+a)+\ln\Gamma(1+b)-\ln\Gamma(1+a+b)\]

を得る。よって \(G\) の \(ab^{2}\) の係数は \(e^{L}-1\) の \(a^{2}b^{2}\) の係数に等しい。

第3段:対数ガンマ関数の展開。\(|z|<1\) で \(\ln\Gamma(1+z)=-\gamma z+\sum_{k\ge2}\frac{(-1)^{k}\zeta(k)}{k}z^{k}\) が成り立つ。\(L\) では一次の項が打ち消し合い,

\[L(a,b)=\sum_{k\ge2}\frac{(-1)^{k}\zeta(k)}{k}\bigl(a^{k}+b^{k}-(a+b)^{k}\bigr)=-\zeta(2)\,ab+\zeta(3)\,(a^{2}b+ab^{2})-\frac{\zeta(4)}{4}\bigl(4a^{3}b+6a^{2}b^{2}+4ab^{3}\bigr)+\cdots\]

となる。ここで省略した項の全次数は \(5\) 以上である。

第4段:係数を読み取る。\(e^{L}-1=L+\frac{L^{2}}{2}+\cdots\) において \(L\) の各項は次数 \(2\) 以上であるから,\(L^{3}\) 以降は次数 \(6\) 以上となり \(a^{2}b^{2}\) には寄与しない。\(L\) からは \(-\frac32\zeta(4)\) が,\(\frac{L^{2}}{2}\) からは二次の項の平方のみが寄与して \(\frac12\zeta(2)^{2}\) が得られる。\(\zeta(2)^{2}=\frac{\pi^{4}}{36}=\frac52\zeta(4)\) であるから,\(a^{2}b^{2}\) の係数は

\[-\frac32\zeta(4)+\frac54\zeta(4)=-\frac{\zeta(4)}{4}\]

である。

結論。以上より \(I=2\cdot\left(-\frac{\zeta(4)}{4}\right)=-\frac{\zeta(4)}{2}=-\frac{\pi^{4}}{180}\) である。冒頭の級数と比べれば,同じ計算によってオイラーの公式 \(\sum_{n\ge1}H_n/n^{3}=\frac54\zeta(4)\) も証明される。

数値による確認。区間を \(\frac12\) で分け,\([0,\frac12]\) では \(x=t^{2}\),\([\frac12,1]\) では \(x=1-s^{4}\) と置換して両端の特異性を除き,100 点ガウス・ルジャンドル則を 40 区間と 200 区間で適用した。いずれも \(-0.5411616168555691\) を与え,\(-\pi^{4}/180\) と \(2\times10^{-16}\) 以内で一致した。

答え. \(-\dfrac{\pi^{4}}{180}=-\dfrac{\zeta(4)}{2}\approx-0.5411616169\)

競技数学の問題

部分集合の和の逆数の交代和

カード: 部分集合の和の逆数の交代和

正の整数からなる有限集合 \(S\) に対し,その要素の和を \(\sigma(S)\) とする。\(n\ge1\) に対して

\[A_n=\sum_{\varnothing\ne S\subseteq\{1,\dots,n\}}\frac{(-1)^{|S|+1}}{\sigma(S)}\]

とおくとき,極限 \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}A_n\) を求めよ。

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極限が \(\dfrac{4\pi}{\sqrt3}-6\approx1.2551974569\) であることを示す。

直接の計算が行き詰まる理由。有限和には目に見える規則性がない。\(A_1=1\),\(A_2=\frac76\),\(A_3=\frac{73}{60}\) であり,\(n(n+1)/2\) までのすべての部分和が現れるため分母は急速に大きくなる。部分集合を大きさや最大元で分類しても,打ち消し合う形にはならない。障害は逆数 \(1/\sigma(S)\) であるから,まずこれを積の形に変える。

第1段:積分表示。任意の整数 \(s\ge1\) に対して \(\frac1s=\int_0^1x^{s-1}\,dx\) である。部分集合について和をとり,空集合が項 \(1\) を与えることに注意して \(\sum_{S\subseteq\{1,\dots,n\}}(-1)^{|S|}x^{\sigma(S)}=\prod_{k=1}^{n}(1-x^{k})\) を用いると

\[A_n=\int_{0}^{1}\frac{1-P_n(x)}{x}\,dx,\qquad P_n(x)=\prod_{k=1}^{n}(1-x^{k})\]

を得る。

第2段:極限。\(0\le x<1\) では各因子は \((0,1]\) に属するから,\(P_n(x)\) は \(n\) について単調に減少して \(P(x)=\prod_{k\ge1}(1-x^{k})\) に収束し,被積分関数 \((1-P_n)/x\ge0\) は単調に増加する。単調収束定理により \(A_n\to\int_0^1\frac{1-P(x)}{x}\,dx\) である(この時点では無限大の可能性も残る)。

第3段:オイラーの五角数定理。\(P(x)=\sum_{m\in\mathbb Z}(-1)^{m}x^{e_m}\),\(e_m=\frac{m(3m-1)}{2}\) が成り立つ。指数はすべて異なり,\(m\ne0\) で \(e_m\ge1\) であるから \(\frac{1-P(x)}{x}=\sum_{m\ne0}(-1)^{m+1}x^{e_m-1}\) である。\(\sum_{m\ne0}\int_0^1x^{e_m-1}\,dx=\sum_{m\ne0}\frac1{e_m}<\infty\) であるからフビニの定理により項別積分でき,極限は有限で

\[L=\lim_{n\to\infty}A_n=\sum_{m\ne0}\frac{2(-1)^{m+1}}{m(3m-1)}\]

となる。

第4段:級数の和。この級数は絶対収束するので \(m=k\) と \(m=-k\) を組にしてよい。\((-k)(-3k-1)=k(3k+1)\) および \(\frac1{k(3k-1)}=\frac3{3k-1}-\frac1k\),\(\frac1{k(3k+1)}=\frac1k-\frac3{3k+1}\) より

\[L=\sum_{k\ge1}(-1)^{k+1}\left(\frac{2}{k(3k-1)}+\frac{2}{k(3k+1)}\right)=6\sum_{k\ge1}(-1)^{k+1}\left(\frac1{3k-1}-\frac1{3k+1}\right)\]

である。ここで \(\frac1{3k-1}-\frac1{3k+1}=\int_0^1t^{3k-2}(1-t^{2})\,dt\) であり,部分和 \(\sum_{k\le K}(-1)^{k+1}t^{3k-2}(1-t^{2})=\frac{t(1-t^{2})\bigl(1-(-t^{3})^{K}\bigr)}{1+t^{3}}\) は \([0,1]\) 上で \(2\) 以下であるから,優収束定理により

\[L=6\int_{0}^{1}\frac{t(1-t^{2})}{1+t^{3}}\,dt=6\int_{0}^{1}\frac{t(1-t)}{t^{2}-t+1}\,dt=6\int_{0}^{1}\left(\frac{1}{t^{2}-t+1}-1\right)dt\]

を得る。最後に \(\int_0^1\frac{dt}{(t-\frac12)^{2}+\frac34}=\frac{2}{\sqrt3}\Bigl[\arctan\frac{2t-1}{\sqrt3}\Bigr]_0^1=\frac{2}{\sqrt3}\cdot\frac{\pi}{3}\) であるから

\[L=6\left(\frac{2\pi}{3\sqrt3}-1\right)=\frac{4\pi}{\sqrt3}-6\]

である。

数値による確認。符号付きの部分和の個数を数える方法で \(A_n\) を有理数として厳密に計算し,\(n\le10\) ではすべての部分集合を直接調べた結果と一致することを確かめ,\(n=200\) まで追跡した。\(A_{20}=1.25516508\),\(A_{80}=1.2551974566\) であり,\(A_{200}\) は \(4\pi/\sqrt3-6=1.2551974569368713\) と \(5\times10^{-16}\) 以内で一致した。組にした五角数の級数も直接計算し,一致を確認した。

答え. \(\dfrac{4\pi}{\sqrt3}-6\approx1.2551974569\)

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